文化講演会「知られざるメルヘンの世界」第1回

今年度の大妻コタカ記念会主催文化講演会「知られざるメルヘンの世界」の第1回が、618日(土)、大妻コタカ記念会で開催されました。

この日のテーマは「ミヒャエルエンデとメルヘン」、講師は大妻女子大学非常勤講師である堀内美江先生。

はじめに堀内先生は、以前ドイツに留学していた時に、子安美知子さん(ドイツ文学者)を通してミヒャエルエンデ氏と親交を結ぶようになったことをお話しされました

講演は「メルヘンとは」ということから始まり、グリム童話の『おいしいおかゆ』をお話しくださいました。優しくも歯切れよい語り口に、聞いている皆さんは、ぐいぐいと引き込まれ、一気にメルヘンの世界へいざなわれました。ぶ

この『おいしいおかゆ』を基にして、メルヘンには共通の形や要素があること、例えば試練を受けながらも幸せな結末に至る魔法物語であったり、繰り返しや対比などの規則性をもっていたり、聞き手がイメージを作りやすい構成になっているなどを、具体的にお話しくださいました。

お話しの一つ一つを、グリム童話や日本の民話などを思い浮かべて、なるほどと納得しながら伺いました。

そして、エンデの『モモ』へ。

『モモ』は1980年代に注目された作品ですが、チェルノブイリや環境問題に人々が注目し、自発的に社会をよくしていこうという市民運動がおこり、さらに90年代に入ると目に見えないものにも目を向けることの価値~無為の肯定~が大切であるという意識が『モモ』の根底にあり、「時間とは命〈Zeit ist Leben〉」を大きな柱として、現代社会とは何かを問いかける内容を持つことで、おとなも考えさせられるメルヘンであることをお話されました。

最後に、メルヘンは敷居の低いところから、数々の試練を受けながらもより高いレベルに向かっていく、人間社会も自然の中でもがきながらも知恵を働かせて広がった意識へ向かっていく、この共通性が古くから人々に受け入れられ、そしてこれからもメルヘンは、現代社会の写し絵として語り継がれ残っていくものであろう、とまとめられました。

この日、堀内先生はエンデ愛用のパイプや、エンデのサイン入りの『モモ』(ドイツ語版)等をお持ちくださり、皆さんに見せてくださいました。

魅力的な講演に『モモ』を再び読み直そう、と思われた方も多かったことでしょう。

堀内先生、そしておいでいただいた皆様有難うございました。

2回は「メルヘンから見える歴史」を1112日(土)に開催いたします。

また違った視点からメルヘンの世界を垣間見ることができると思いますので、どうぞお楽しみに。

 

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